「誰か助けて!」こんなにも辛い、保育士の現実
保育園で働いています!と自己紹介をすると、
「子どもと遊べるお仕事、楽しそうですね〜!」
とか
「素敵なお仕事をされてるんですね」
というポジティブなイメージを持たれることが多いですよね。
保育士はたしかに素敵なお仕事です。
子どもの成長を間近で見ることができるし、子どもたちの達成感や喜びを一緒に味わえるということは、とても貴重な時間だと思います。
しかし、「やり甲斐」はあるけれど、どうして離職率が高いのでしょうか?
ほとんどの保育士が、勤務して5年以内に職場を離れてしまいます。
他の保育園に転職する保育士もいれば、「もう保育士なんてこりごり!」と言って、保育士自体を辞めてしまう人も。
せっかく勉強をして資格を取って働いているのに、これでは勿体無いですよね。
そこまで先生たちを追い込んでしまう現場の実情とは……?
業界外の人にはあまり知られていない保育士の「助けて!」について、今日はお話したいと思います。
本当に「楽しい」お仕事?
冒頭でも言いましたが、「保育士=楽しい」と思われることが多いのですが、実際のところは楽しいだけではやっていけません。
子どもの感染症がうつることもあるし、少ないお給料や毎日の残業に耐えながらもクラスの子どもを守るために働かなくてはいけません。そして、同僚との人間関係、保護者対応でストレスがたまって疲れてしまう保育士は多いのです。
保育士は子どもと遊ぶだけ、というのは大間違い。
もちろん、子どもは1日を通して遊ぶことが仕事です。保育士は一緒に遊んでいると同時に、子どもの命を常に守っています。園庭で遊んでいる時も、公園で遊んでいる時も、給食を食べている時も、子どもたちに危険のないように常に気を張っているのです。
そして、業務は遊びの見守りだけではありません。むしろ、遊びよりも雑務のほうが多いのです。
よく知られているのは午睡中に書く連絡帳。保護者が帰ってくる前に仕上げなければいけないので、子どもたちが寝ている間に書き上げる必要があります。
そして、明日の準備。工作用の画用紙を切ったり、絵の具を準備したり、お散歩に出かけるのであれば、持ち物の準備も念入りに行った上で、担任同士で入念な打ち合わせを行う必要があります。
書類の作成も大量です。日案、週案、月案、行事の計画書などがだいたいの保育園で書かれている書類です。日案は毎日の記録、週案は週ごと、月案は月ごと。行事の計画は、お誕生日会や運動会、発表会など特別な催しの際に作ります。ひとつの書類が完成したと思ったら、また次の書類作成が舞い込む日々。残業や持ち帰り仕事をしなければ保育士の仕事は終わりません。
この仕事量を知っても、まだ「楽しいだけの仕事」と言えるでしょうか?
言いづらい「助けて」の言葉
ここまで辛い仕事なら、誰かに助けを求めて辞めてしまえば良いのに……と思いませんか?しかし保育士がなかなか「助けて」と声に出して言えないのには、いくつか理由があることをご説明しましょう。
子どものことたちを思うと言えない
日々、相手にしている子どもたちの顔を思い浮かべると、弱音を吐けなくなってしまいます。子どもたちがいるから、仕事を頑張れるという人もいますね。
育児中のお母さんにもありがちな心理ですが、子どものために身を削ることは良いことである、という心境に陥ってしまいます。さらに、保育園という職場では他の職員もいるため、集団心理として「苦しくても頑張ろう」という方向性に傾く危険性があります。他の先生があんなに頑張っているのに、私だけ弱音を吐けない……という気持ちですね。
転職の準備をしている時間がない
辛い、辞めたい!と思っても、辞めた後にどうしよう?という現実問題があります。実家暮らしであれば、しばらく仕事を辞めてゆっくりと次のジョブチェンジを迎えるという選択肢があるかもしれません。しかし、一人暮らしをしている人であれば「働かない期間」が生じることは、大抵の場合許されません。お金に余裕があれば良いけれど、保育士の給料を考えれば「何ヶ月も仕事を休めるほどの貯え」は準備できないと思います。
さらに、時間の問題もあります。毎日これだけの重労働をしていると、転職活動をしている余裕がなくなってしまいます。仮に家に帰ってからや、休日に時間があったとしても、心身ともに疲れてしまい、次の就職先を探す元気がないという場合が多いのです。
そうして保育士たちは、辛さの限界を超えてもなかなか「助けて」を言えなくなってしまうのです。
これからの保育士を救うために、どうしたら良いの?
保育士は楽しいだけの仕事ではない、ということが分かっても、一体どうしたら良いのでしょうか。
保育士個人の努力だけではどうしようもない部分が多いのですが、以下のような点が改善されると働きやすくなるのではないでしょうか?
労働時間の調整
職務規定上は8時間労働が定められていますが、実際にはプラス5時間前後の残業をしているのが保育士の現状。
働きすぎによるストレスフルな状態を緩和するためには、経営者側が労働者に配慮した勤務体制を作ると同時に、働いている保育士本人も気をつける必要があります。まずは「この曜日だけは残業をしないで帰る」と決めて守ることから始めてみませんか?
お給料のアップ
保育士の悩みの1つに低収入の問題があります。プラス10万円お給料が高かったら、納得して働くのになあと思っている保育士は少なくないはずです。
現在、マスメディアでも保育士の諸問題が取り上げられており、給料を1万数千円アップするということが発表されたばかりです。しかし、1万円ちょっとお給料が上がったところで、今の労働形態のまま働きたいと思うでしょうか……?
やはり、仕事内容に相応しい収入を考え、見直しが行われるべきです。
転職という選択肢をもっと当たり前に
保育園を辞めて新たな保育園に……という方向転換は、人によっては罪悪感を感じる場合があります。しかし、保育士だって職場を選ぶ権利があるのです。
「園長先生の意向にどう合わせるか」だけでなく、「自分の能力を活かし、好きな保育ができる職場はどこか」という気持ちを強く持ち、自分に相応しい保育園を選ぶと仕事が楽しくなります。
保育士の実情をもっと知ってもらう
保育園の中で起こったことは、誰にも言ってはいけない……という潜在意識が働き、誰にも相談できず1人で悩みを抱え込んでしまう保育士は多いのです。
しかし、誰かに相談し、保育士の実情を知ってもらうことは非常に有意義なことでもあります。異業種の方の視点で見てみると、新たな解決策を提案してもらえる可能性が広がります。
自分を助けるのは自分
助けて!と誰かに言うことはとても大切なことです。
しかし、実際に行動し、辛い状況を打開できるのは自分しかいません。
職場の中で仕事の仕方を変えてみるのも良いでしょう。保育士の転職サイトに登録し、新たな職場探しをするのも良いでしょう。
今の保育園内の状況に違和感を感じ、「もう続けられないな……」と感じたら、変化を起こすために何でも良いから行動してみてください。
いちばん怖いのは、自分を責めてしまうこと。たとえば、残業のしすぎで倒れてしまった同僚は、自分の「体力のなさ」を悔やんでいました。
この仕事についていけない自分が悪い!と思うのではなく、自分に合った仕事とは?という地点に立って考えてみると、心が楽になりますよ。
著者:東京都在住 20代後半 女性 元保育士
参考サイト:つらい、やめたい保育士さんのための転職サービス