【現場の叫び】保育士が辞める理由には、給料の他にも問題点が…
「待機児童問題を解消するために、保育士の数を増やそう!」
という取り組みが続けられています。
しかしそれでも保育士の離職率は高く、復職率は低い傾向にあります。
給料を少し上げたくらいでは、辞めてしまった保育士は戻ってきません。
これには、保育士特有の問題点が大きく関係していると思います。
この問題に関して、2017年4月、市場調査の大手「マクロミル」が、興味深いアンケート結果を発表していました。
保育士がなかなか戻ってこない原因には何があるのでしょうか?
調査結果の「保育園を辞めた理由」を元に、保育経験者の私から、少しお話させていただきたいと思います。
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著者:きょう /岡山県/30代後半女性/保育士歴9年
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保育士不足で一番に上げられるのは、給料の低さ
保育士の処遇問題でも良く言われるのが「給料の低さ」です。
確かに保育士の給料は仕事量に比べると低く、ベースアップもほとんどないという現状です。
私も、保育士を退職していますがその理由の一つには「給料の低さ」が関係しているでしょう。
決して楽な仕事ではないのに、毎月これだけしか貰えないの?!と感じたら最後。
仕事に対する未練や執着は一気になくなってしまうのです。
私のような人ばかりとは言えませんが、保育士を退職してしまう人の中で一番大きな理由は「給料の低さ」があげられるのです。
こうして退職してしまった保育士さんを「潜在保育士」と言いますよね。
他にも資格はあるけど、大学などを卒業した後、保育士として働かず、資格だけ持っている人もあわせると、現役の保育士さんより潜在保育士の数が圧倒的に多いんです。
これだけ退職率が高いのなら仕方のない実態でもありますよね。
また、保育士資格は国家資格でもあり更新などの手続きも必要ありませんので持っていて邪魔になる資格ではないというところもあります。
保育課程を修了しても保育士として就職したいと感じない人が多くなっているのにもまた給料の低さが大きく関係しているんですね。
確かに、給料は低いです。
ですが、保育士はやりがいの大きな仕事でもあります。
お給料の問題だけであれば、退職率はそこまで高くならないと思うんですよね。
にも関わらず退職率が高く、復職率が低いのには、他にも見過ごせない問題点が複雑に絡んできているからなんです。
保育士が辞める理由2位…専業主婦になったから
保育士が退職するタイミングとして、「結婚」と「出産」がかなり多いですね。
何故このタイミングかというと、円満退社が一番望めるタイミングだからです。
保育士不足の現在、「辞めます!」と言って引きとめられない保育施設はほとんどありません。
正規職員が無理ならパート保育士はどう?勤務が厳しいのなら短時間でもいいから…など引きとめられることもしばしば。
何故こんなにも、保育士に退職して欲しくないのかと言うと、保育士の人数が、保育施設の受け入れ可能児童数に直結するからです。
たとえば保育士が1人減ると、3歳以上の園児20人程度が受け入れ不可になります。
これは法律によって定められた配置基準と呼ばれるルールです。
保育施設にとって、保育士が1人辞めてしまうというのはかなりの痛手なんですね。
なので園としては引き留めるのですが、実は正規職員で働いていると育休も取りにくいという現実があります。
保育施設なんだから、働くお母さんには理解のある職場だろう、と思われるかもしれませんが、そんなことは全くありません。
ここには先ほどの配置基準が大きく関わってきます。
育休というのは、保育園からお給料を貰いながら、1~3年程度の休みを頂くというシステムです。
私立の保育園に勤めていて、育休を3年貰うという人はほとんどいません。
保育園側にとっても、頭数に入れない職員を雇うのはリスクが伴うからです。
また育休をあけて復職したとしても、自分の子どもをどこか別の保育園に預けなくてはいけなくなったり、最初のうちは「慣らし保育」や「発熱で早退」などの問題が出てきます。
近くに協力してくれる人がいればいいですが、そうでない場合は保育園の勤務を休まなければいけません。
何度も何度も、保育士が欠勤するというのは保育施設にとっては頭の痛いことです。
この事から、保育園勤務では有給についても使いにくい所が多いのではないでしょうか。
そういった環境なので仕事を続けることが出来ず、出産や結婚を機に専業主婦になるという選択肢を取る人も多いのです。
あわせて、保育士というのはもともと子どもが好きな人がほとんどですから、自分の子どもとじっくり過ごしたいと考える人も多いんですね。
保育士が辞める理由3位…労働時間が長い
更に保育士を悩ませる問題として、「労働時間が長い」というものがあります。
退職の理由でも第3位に上がってくるように、保育士の労働時間は本当に長いです。
ほとんどの保育施設(特に保育園)では、シフト制の勤務で、もちろん土曜日の出勤もあります。
中には日曜保育を行っている施設もあり、もちろん代休は貰えますが、毎日働いているような気分になるのです。
またクラス担任を持っていると、帰宅した後も持ち帰りの仕事をしたり、何もしてない時でも、明日の保育はどうしよう、そう言えば〇〇くんこんなことしてたけどどうしてあげようかな、などと考えてしまいます。
また保育士さんの多くは、行事の前など、自宅で持ち帰りの仕事をしていたら朝になっていた…という経験があるのではないでしょうか。
帰宅したからと言ってリセットできないというのが保育士の問題点ですね。
保育時間は長いのに、しなくてはいけない仕事はたくさんあり、事務や雑務、制作に行事の準備、と保育士さんは本当に忙しいのです。
これを経験してきている保育士さんは、一度辞めるとなかなか前のように働きたい!と思う人は少なくなります。
保育士さんに関する負担が大きく、それを周りが理解してくれにくいというのも大きな問題点ですね。
保育士が働きやすい環境づくりを
保育士を退職してしまった人で、もう一度保育園で働きたいと考える人は半数以下です。
その背景には、こういった問題点があるからなんですね。
一方で、退職した保育士さんでも、保育士という職業に大きなやりがいと充実感を感じているというのも紛れもない事実です。
保育士が働きやすい環境づくりを進めてくれさえすれば、潜在保育士の数もグンと減り、待機児童問題も一気に解消すると思うのですが、どうでしょうか?
保育士は「対人」の仕事ですので、処遇改善と言っても難しい問題が山積みかもしれません。
少しずつでもいいので、「働きやすくなったね。」と思える勤務環境を整えてほしいものですね。