認可保育所、入園予約制は効果がある?
- 入園予約制とは
- 0歳児の入園事情
- 子どもを何歳から預けるか
- 育休を工夫する企業も。しかし・・・
- 認可保育園予約制はこれに耐えられるか
- 早生まれの子は保活で不利になる
- 予約制に代替できる案は?
- 安全でみんなが助かる策を
- 要点まとめ
認可保育所、入園予約制という新しい制度の導入を厚生労働省が即す方針を決めたと言う報道がありました。
この、入園予約制というのはなんでしょうか?
入園予約制とは
会社員の育児休暇は、多くが1歳になるまで取ることができます。
ですから、保護者は1歳まで取得したいと考えているのですが、待機児童の多い地域では1歳児の枠は0歳児からの進級でほとんど埋まってしまうし、年度途中で入園できる可能性はほぼないと言うのが現状。
結果的に育児休暇を切り上げて0歳児枠で入園させるケースが多くなっているので、予約枠を確保してこどもが1歳になった時点で入園することができるようにする制度です。
0歳児の入園事情
まず、ここで0歳児について整理してみましょう。
通常一つの学年は「00年4月2日~00年4月1日」までに生まれた子になります。
ですが0歳児だけがちょっと複雑です。
01年4月1日現在0歳だった子は、0歳児クラスになります。
ですから01年4月2日生まれの子は、翌日1歳になりますが、0歳児クラスになります。
ですから0歳児クラスの3月31日には1歳11カ月の子がいることになります。
では一番小さな子はいくつになるのでしょうか。
自治体や園によって様々ですが、育児休暇明けで受け入れる園の場合、02年1月生まれの子を02年3月に受け入れることが可能です。この時0歳児クラスには1歳11カ月のこと2か月の子が一緒に過ごすことになるわけです。
子どもを何歳から預けるか
保育園で一番子どもが多く入れるのは新年度の4月です。
1歳になったら入園させようと思っている場合、新年度の募集を過ぎています。この場合、0歳児の4月に入園するか、1歳になってから保育園に入園する手続きをして空きを待つかになります。
保育園枠が空くのがいつになるのかわからないのに、待ってくれる会社はそう多くはないでしょう。そのため、0歳児の4月に入園することを選択する保護者が多くなると言うのです。
国の基準で0歳児は保育士1人につき3人しか保育できません。
0歳児がたくさん保育園に入ってくれば、ほかの学年に比べて、それだけ保育士がたくさん必要になるのです。
育休を工夫する企業も。しかし・・・
実は、これに対応している企業もあります。
育児休暇を1歳になった最初の4月までにすると決めているのです。こうすれば最大1年11カ月の休暇をとることが出来、企業としてはいつ復帰してくれるのかがはっきりするし、保護者としては安心して育児休暇が取れるだろうと言う制度なのです。
一方、この制度が充実している企業の多い地域では、1歳児クラスの入園が激戦になります。
実際に、正社員の育児休暇明けであること、祖父母などの応援が得られないこと、兄弟姉妹が同じ保育園に在籍していることなど、優遇されると考えられる条件をクリアして同じ点数を有している児が、入園できる人数より多くなり、どうやって選べばいいのかと頭を抱える事態もあります。
本来1歳児なると、国の基準で保育士1人につき6人、自治体基準で4,5人の保育をすると決まっているところもありますが、それでも0歳児に比べて枠が広がるため、入園できる数は広がるはずです。
でもそれ以上に希望者数が多く、結局入園できないことになる。
そのためにせっかく『1歳になった最初の4月まで』とることのできる育児休暇があるにもかかわらず、0歳児のうちに復帰することを選ぶことも少なくありません。
認可保育園予約制はこれに耐えられるか
最初の話に戻しましょう。
これで認可保育園予約制が、機能するかどうかを考えれば一目瞭然です。
予約枠は激戦になることが容易に予想できます。予約枠のために、通常枠が少なくなるわけですから、ますます入園するのは難しくなる可能性も十分あります。
また保育士の側から考えても問題があります。
たとえば予約枠の子が9月入園することが決まっているとしましょう。
それまでの間、保育園ではこどもが一人少ない状態で運営することになります。
これは4月~8月までは保育料が入らないと言うことです。その状態で保育士を確保しなければならないと言うことは、保育園に負担を強いることになります。
結局、待機児童問題の解決にも、保育士不足の解決にも、ましてや保育士の待遇改善にもならないと言うことです。
早生まれの子は保活で不利になる
上記の表はもうひとつのことを表しています。
早生まれの子は保育園に入るのが大変だと言うことです。
早生まれの子は1歳児の枠しか最初から考えることができません。0歳児枠を確保しておくと言う方法が使えないのです。
もし保育園に入れなかったら・・・というプレッシャーは想像するだけでもつらそうです。
予約制に代替できる案は?
だったらどうするのでしょう。
ベビーシッターを利用する
たとえば、現在ベビーシッター育児支援事業というのがあります。現在ある一定の条件を満たしていれば1日1700円の割引を1カ月に24回使えると言う制度です。
現在は公募により選定された事業所のみでつかえるようですが、このような制度を使うのはどうでしょう。
現実的には、ベビーシッターはなかなか高価です。1時間当たり1000円~4000円というところも少なくありません。
もし、待機児童になったためにこのベビーシッターを1日8時間、月20日利用すると16万円~64万円かかります。これは全く現実的な値段にはなりませんね。
あくまで、認可園の保育時間外などに利用したり、結婚式、お葬式、体調不良などの突発的な時に利用するのが限界と思われる値段です。
保育ママを利用する
一部の自治体に限られているようですが、保育ママというのもあります。
一定の基準を満たした保育専用の部屋が確保されている自宅で、保育に専念してこどもをみてくれます。この場合、地方自治体からの補助がありますから保護者の負担金は2~4万円くらいですむようです。
安全でみんなが助かる策を
保育園が不足している自治体では、ベビーシッターに対する補助金を充実させ活用したり、保育ママの導入をもっと積極的に考えればいいのではないかと思います。
もちろん、保育の質が落ちることがあってはいけないので、有資格者であることを条件にすることや、研修・報告や場合によっては実際の保育の視察なども考える必要があるかも知れません。
けれども、保育園を1つ作ることを考えれば、ずいぶんたくさんの補助金を出すことが可能なのではないでしょうか。
そうやって、保育園に入園できるのを待つ方が、予約制度よりもずっと現実的に有効な策のような気がします。
今の待機児童問題が保育士不足に起因している部分が多いことを考えれば、もっと保育士の待遇改善や有効な対策を国や自治体に考えてもらいたいものだと思います。
そして、それまでの間、せっかく保育士として働いているキャリアとスキルを守るために、よりよい働き先を探して待つことが保育士のできる自衛の策かなとおもいます。
要点まとめ
- 保育園の0歳児クラスには、かなりの年齢の開きがみられる。また、多くのお母さんが育休から復帰する1歳児クラスは激選区となる。
- もし予約制度ができれば、予約による確保で、当然一般枠が減る。保育園が得る保育料も減る。
- これって保育園側・働くお母さん側の余裕をさらになくす制度じゃない?
- だから、許認可制度の権益に絡んだ制度改革ではなく、他サービスに対する補助&規制緩和と、緩和されたルールに起因した保育事故の防止という『前に進む』変更が必要なのでは?
著者:40代女性 保育士 神奈川在住