「残業はするな」と言うのは残業過多よりもましなのか
以前、過労死と認定された若い女性とその会社が話題になりました。
会社に20時間いることもあったと言う話を聞くと胸が痛くなります。
- 働きすぎを防ぐ「過労死ライン」とは
- 保育園でも「残業禁止」の取り組みが始まった
- 残業なし、それでも減らない保育士の仕事
- 「時間に追われる保育士」ばっかりの保育園はどうなる?
- 「残業禁止」その前に取り組むべきこと
- 自分の保育園は、自分で選ぶ
働きすぎを防ぐ「過労死ライン」とは
過労死ラインと言うのをご存知ですか?
労働基準監督署が 脳出血や心筋梗塞などによる過労死を労災認定する際の基準として、厚生 労働省が定める時間外労働時間。
1カ月で80時間となっています。
厚生労働省のPDFはこちらです→ www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/roudou/gyousei/rousai/dl/040325-11.pdf
1カ月の稼働日は週休完全2日制だと20日前後になります。
ですから、一日の残業は4時間以下となります。
多くのサラリーマンは、17時~18時終業になりその後4時間残業すると22時。
これが毎日続くようだと過労死ラインと言うことになります。
保育園でも「残業禁止」の取り組みが始まった
はてさて、あの事件があったからか、それとも他に何らかの理由があるのかわかりませんが
「残業禁止」
と職場で言われました。
「残業代は出ないんだから、残業はしないように。」
残業なし、それでも減らない保育士の仕事
保育士の仕事は子どもの保育をすることです。
保育士の勤務時間はほとんど子どもを保育する時間です。
唯一、子どもを保育する以外のことをすることが可能な時間は子どもが午睡中のみです。
この時間に、連絡帳を書く、保育日誌を書く、帰りに保護者に伝えてほしいことをメモして遅番の人に伝える、子どもたちの荷物の中で不足しているもの(オムツ、着替えなど)をチェックする、保育室やトイレ、その他の掃除と言う毎日する業務をします。
そのほかに、児童票の記入、園だより・クラスだよりの作成、年案、月案、週案の作成などを行います。ここまでは個人情報に絡むことですので持ち帰りが禁止されています。
それ以外に、壁面構成の作成、子どもの制作物の準備と整理、行事のための小道具や衣装などの作成、日々の保育で使うペープサートや絵本などを作成したり準備したりといったことがあります。
そして、本来は8時間の勤務をしていれば当然取れるはずの休憩時間は、この時間に交代でとることになっているのです。
どうやったら残業しないで仕事が終わると言うのでしょう。
時間のある人が協力して助け合って仕事をするようにと言われましたが、誰か時間に余裕のある人がいるんでしょうか?1年間ほとんど休憩もとれずに働いているのです。
余裕のある人は誰もいません。
出来ないと言うと能力がないと言われますので、業務の効率化を図るのですが、それでも人間は100mを1秒で走れないように、業務を行うのに最低限必要な時間を削ることはできないのです。
「時間に追われる保育士」ばっかりの保育園はどうなる?
仕方がないので、業務に直接関係ないと思われることを極力減らします。
- 保育士はシフト勤務ですので、自分のいない時間もあり、その時の情報を得るためや、業務を円滑にするためには必要と思われるのですがそれでも同僚との雑談をする時間はありません。
- ピアノが弾けますので、うまく弾けないところを聞かれたり、パソコンが出来ますので、パソコンが不調だったりすると相談されたりするのですが、そんなちょっとした相談ごとを聴くこともシャットアウトします。
- パソコンの前で、ピアノの前で、ほかにもこどもが大泣きしているなど周りで困っている同僚がいます。でもそれに手を出せば、また自分の時間がなくなるからといって聞こえないふりをします。
- そうやって周りとのコミュニケーションを立った結果だんだん周囲に関心が向かなくなります
- 一人ひとりが孤立して仕事するようになり、円滑な保育ができる状況ではなくなります。
- 普段からそうやって相談もしないし、助けもしないので自分も助けてももらえなくなります・・
こんな状況でよい仕事ができていると言えるんでしょうか。
こんな職場は、居心地が悪くて早急に辞めたいと感じるような職場ではないでしょうか。
「残業禁止」その前に取り組むべきこと
残業を強要する、ましてやサービス残業を強要するのは確かによくないことです。
人間らしい生活をする権利が私たちにはあります。
でも、業務が全く減っていないのに『残業をするな』と言うのは、何の解決にもならないどころか、円滑な業務をするのと真逆な方向に進むのです。
もしあなたが、業務も減らない、人も増えない、なんの解決策も考えずにただ「残業はするな」と言う職場で働いていたら、その職場は早晩とても居心地の悪い職場になるか、言葉だけで残業は全く減らないかどちらかです。
どちらにしても働きやすい職場とは言えません。場合によっては無能のレッテルを貼られ、尊厳にかかわるような心に痛い傷を負うことになります。
自分の保育園は、自分で選ぶ
今、少しずつ保育士の働く環境はよくなっています。そこにとどまることはありません。
もう少し働きやすい職場があるかもしれない、と求人を探すことをお勧めします。
自分の心と体を守ることができるのは自分だけなのですから。